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01 三年前、終わった恋。

神谷玲司とは、三年間付き合った。
最初の頃の彼は、優しかった。
約束を守って、会う時間を作って、
好きだということもちゃんと言葉にしてくれる人だった。
だから、三年も一緒にいた。
けれど最後に玲司が選んだのは、私ではなかった。
交際中に別の女性と関係を持ち、
それが発覚したあとも、彼は私との関係を取り戻そうとはしなかった。
玲司は、その女性を選んだ。
それが、私たちの終わりだった。
02 昨日、聞いた名前。

彼と別れて転職してから数年。
新しく始まる他社との共同プロジェクトで、 私は自社側の実務担当を任されることになった。
キックオフミーティングを翌日に控えた午後、
直属の上司から相手企業側の担当者について説明を受けた。
そこで聞いた名前は――
神谷玲司。
担当を替えてほしいと申し出た。
けれど、すでに決まった体制を今から変更するのは難しい。
そう言われ、希望は通らなかった。
その話の流れで、上司は何気なく付け加えた。
玲司が一年前、事故に遭ったこと。
今はすでに復職していること。
そして――
事故以前の数年間について、記憶にかなりの欠落があるらしいこと。
上司も、それ以上の詳しい事情までは知らなかった。
私との三年間も。浮気したことも。
別の女性を選んだことも。
そこまで本当に忘れているのかは、まだ分からない。
03 そして、翌日。

両社合同の初回キックオフミーティング。
会議室のテーブルには資料とノートPCが並び、 開始時刻が近づくにつれて、社内のメンバーも席に着いていく。
まもなく、相手企業の担当チームが到着する。
三年前に別れた元恋人。一年前の事故。
失われた、数年間の記憶。
昨日聞いた話だけでは、
玲司が何を覚えていて、何を忘れているのかまでは分からなかった。
私のことも、忘れているのか。
それを確かめることになるのは、もうすぐだった。
会議室の外から、複数の足音が近づいてくる。
ドアの向こうで、誰かが短く声を交わした。
そして――
会議室の扉が開いた。