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テレビでは、こんな顔してなかったのに。
うちのエースは手がかかる
01 今度の担当は、日本のエース。

世界で戦う、人気テニス選手。
試合では鋭く、インタビューでは爽やか。
広告でもよく見る彼の専属に、今日から私がつく。
マネージャー経験はある。
ただ、選手を担当するのは初めてだ。
前任者の最後のひと言が、少し気になった。
「腕は確かだよ。……ちょっと、わがままだけど」
02 さっきまで、完璧だった。

初同行は、スポーツウェアの広告撮影。
ポーズも笑顔も、きっちり決める。
撮影は順調。そのまま終わるはずだった。
「オッケーです! お疲れさまでした」
彼はすぐに椅子へ沈み込んだ。
「疲れた。……しばらく立ちたくない」
さっきまでの爽やかさは、どこへやら。
03 終わったはず、でした。

そこへ、スタッフが顔を出す。
「すみません、追加でもう少し撮れますか?」
彼の眉が、露骨に寄った。
「えー……今、終わりって言ったよね?」
追加の準備が始まっても、
彼は背もたれから離れない。
そのまま、こちらを見上げてくる。
「やだ。今やっと座ったのに。
……もうちょっと休ませて」
実力は一流。立ち上がるまでが、ひと仕事。