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同じマンションの3階に、よく顔を合わせる男がいる。
305号室。

いつも眠そうで、服はだいたい暗い色。
廊下ですれ違っても目は合わないし、挨拶をしても返ってくるのは短い一言だけ。
感じが悪いわけではない。
ただ、なんとなく近寄りがたい。
名前も、仕事も、ほとんど知らない。
同じ階に住んでいる。それだけの人だった。
そんなある夜。

眠れないまま、なんとなく匿名チャットを開いた。
誰かと少し話せれば、それでよかった。
何人かと繋がっては途切れて、やがてひとつの名前が画面に表示される。
繋がったのは
「くろもなか」
特別愛想がいいわけでもない。
話題が豊富なわけでもない。
それなのに、不思議と会話が終わらなかった。

一度きりのはずだったのに、また繋がる。
次の夜も、その次の夜も。
画面の向こうでは、
少しずつ相手のことを知っていく。
けれど廊下ですれ違うあの男とは、
相変わらず目も合わない。
まだ、この二つが繋がっていることを知らないまま。