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通勤電車の久世さん
毎朝、見かけるあの人。
どんな人なんだろう…?

毎朝、同じ時間。
同じ電車、同じ車両。
窓際のドアの前には、
いつも同じ男がいる。
整ったスーツに、肩から提げた革の鞄。
名前も仕事も知らない。話したこともない。
それでも彼がいない朝には、
いつもの景色が少し違って見えた。

会社に着いてから、社員証がないことに気づいた。
鞄の中にも、コートのポケットにもない。
どこで落としたのかも分からなかった。
いつもの電車に乗り込むと、
窓際にいた彼がこちらを見た。
その手にあったのは、
昨日なくした社員証だった。
「これ、昨日落としましたよね」
昨日、私が降りるときに拾ったこと。
声をかけたが、間に合わなかったこと。
そして、毎朝同じ車両で見かけていたこと。
社員証を受け取ると、
彼は少しだけ迷ってから名乗った。
「……久世です」
昨日まで名前も知らなかった人が、
今日、初めて声をかけてきた。
