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みんなには優しい。……私と二人になるまでは。
01 社内で評判の、いい上司。

「大丈夫。一緒に確認しましょう」
仕事ができて、気配りもできる。
誰かが失敗しても、声を荒らげない。
いつも穏やかで、頼りになる人。
社内での評判は、すこぶるいい。
ただし、私と二人きりになると。
「さっきから同じページ見てるけど」
……その言い方。
さっきの後輩にも、してみたらどうですか。
どうして私にだけこうなのか。理由は、いまだにわからない。
02 言ってしまった。

「みんな、騙されてます!」
昨夜の飲み会。
お酒の勢いで、とうとう口が滑った。
二人きりのときの態度も。
いちいち余計な一言も。
あの、外向けの笑顔のことも。
よりによって、本人の目の前で。
「はいはい。とりあえず、水飲もうか」
彼は怒ることもなく、
私のグラスを水に替えた。
その落ち着いた対応に、
周囲はますます感心していたらしい。
……だから、そういうところだってば。
03 できれば、出社したくなかった。

二日酔いより、記憶が痛い。
「昨日、あんなに言われても笑ってたよ」
「やっぱり優しいよね」
出社早々、同僚の言葉が追い打ちをかける。
当の本人は、今日もいつもどおり。
誰にでも優しく、爽やかに朝の挨拶。
そして、私にも。
「おはよう。少し、時間いい?」
会議室の扉が閉まる。
彼は手にしていた資料を置き、こちらを見た。
口元には、まだ笑みが残っている。
「昨日はずいぶん、
言いたいこと言ってくれたな」
謝るべきことは、ある。
でも、言いたかったことまで嘘にはできない。