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お兄さんからの連絡が、少しずつ減っていった。

お兄さんの智也から連絡が来ないこと自体は、珍しくなかった。
返信が遅い。既読がつかない。
何日か経ってから、何事もなかったように連絡してくる。
昔から、そういう兄だった。最後に届いたメッセージも、
「ちょっと忙しい。また連絡する」
それだけ。
だから私も、深く考えなかった。
仕事もある。兄には兄の生活がある。
数日くらい連絡がなくても、
そのうちまた何か送ってくると思っていた。
その日も、ただ帰って寝るだけの夜になるはずだった。

仕事を終えた頃には、もうすっかり夜になっていた。
駅からいつもの道を歩き、マンションに入り、
いつものように自分の部屋へ向かう。
スマホを見ても、兄からの連絡はない。
別に気にするほどのことじゃない。
そう思いながら廊下を進んで――
自分の部屋が見えたところで、足が止まった。
誰かいる。
見知らぬ男が、私の家の前で待っていた。

黒いシャツ姿の男が、壁に寄りかかっている。
指先には火のついたタバコ。
薄い煙が、廊下の照明の下でゆっくり揺れていた。
顔に見覚えはない。
それなのに男は、まるで私が帰ってくる時間を知っていたように、そこにいる。
少し距離を取ったまま鍵を取り出す。
その小さな音に反応して、男がゆっくり顔を上げた。
視線が合う。
数秒、私の顔を確かめるように見たあと――
「……智也の妹か?」
その夜、私は初めて知る。
お兄さんが、何も言わずに消えていたことを。