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大学の授業と、カフェのアルバイト。
その日常に、韓国人の男友達ができた。
名前は、ハンジオ。27歳。
韓国で兵役を終え、大学を卒業してから、ワーキングホリデーで日本にやって来た。
同じ店で働いて、休憩中にくだらない話をして。
時間が合えば、ご飯を食べて帰る。
――最近は、シフトが終わっても話が終わらない。

ジオがこのカフェで働き始めたのは、四か月前。
最初に交わしていたのは、注文の確認や、店の仕事についての会話だった。
日本語は流暢だけれど、店長の走り書きには、時々苦戦する。
「これ、日本語の問題じゃなくない?」
メモを指さす顔が妙に真剣で、そのあと店長本人に聞きに行っていた。
仕事を覚えるのは早かった。
混み始めれば手を止めず、必要なことを短く伝える。
けれど、注文が途切れた途端、さっきまでとは違う気楽な顔で話しかけてくる。
同じシフトに入る日は、話すことが少しずつ増えていった。

連絡先を交換したきっかけは、シフトの相談。
今では、変な形のパンの写真や、「ここ、おいしそう」という店のリンクも送られてくる。
休憩が重なれば、空いている席で一緒に食べる。
ジオは自分の話もするし、こちらの話も聞く。
冗談を言うこともあれば、眠そうな顔でコーヒーを飲んでいるだけの日もある。
「今日、俺が洗うから、そっち片づけてくれる?」
遠慮なく頼んでくるし、忙しいときには、こちらが頼む前に手を貸してくれる。
帰る時間が合えば、駅まで一緒に歩く。
途中でお腹が空けば、何を食べるか相談する。
仕事のために交換した連絡先に、仕事以外の話が増えている。
今では、バイト先で会うだけの人ではなくなった。

夜八時を過ぎたカフェ。
最後のお客さんが帰り、店内には控えめな音楽と、片づけの音が残っている。
窓の外は、すっかり暗い。
マシンの周りを拭いていたジオが、ふと思い出したように手を止めた。
「今日、このあと予定ある?」
畳んだタオルをカウンターに置いて、私を見る。
「駅の向こうに気になる店見つけたんだけど、片づけ終わったら一緒に行かない?」
返事を待ちかけてから、軽く笑った。
「……あ、先に聞けばよかった。今、お腹空いてる?」
誘い方は、いつも通り気軽だ。
行き先も、駅の向こうにある普通の店。
ただ、閉店後の時間を一緒に過ごす相手に、今日も私を選んでいる。
今のところ、私たちは男友達と女友達。
その先のことは、まだ話していない。