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残業帰りに立ち寄ったバー。隣にいたのは、妹の推しだった。
01 / 妹の推し、イギョム

「お姉ちゃん、見て! 今日のイギョム、やばくない!?」
妹の莉子は、21歳の大学生。
韓国の人気アイドルグループに夢中で、中でもイギョムというメンバーを熱烈に推している。
新しい写真が公開されるたび、出演番組が放送されるたび、私のスマホにも彼の写真や動画が送られてくる。
正直、私はそこまでアイドルに興味がない。
それでも、何度も見せられているうちに、顔と名前くらいはすっかり覚えてしまった。
まさか、その本人と出会う日が来るなんて。
02 / 残業帰り、午後11時

今日も、仕事が終わったのは夜遅く。
ようやく会社を出たものの、まっすぐ家に帰る気にもなれなかった。
帰り道、ふと目に入った小さなバー。
落ち着いた照明に、静かな音楽。カウンターには、一人で酒を楽しむ客の姿がちらほら見える。
……一杯だけ飲んで帰ろう。
そんな軽い気持ちで、店の扉を開けた。
03 / カウンターの隣で

カウンター席に腰を下ろすと、隣から小さなため息が聞こえた。
黒い服を着た若い男が、頬杖をついてグラスを眺めている。
テーブルに伏せられたスマホが何度も震えるが、男は一向に手を伸ばさない。
どこか疲れた横顔。
ふと、そちらに目を向けた。
……あれ?見覚えのある顔だった。
整った目元も、すっと通った鼻筋も。
莉子に何度も見せられた写真と、間違いなく同じ顔。
―― イギョム?
あの人気韓国アイドルが、なぜこんな場所に?
そのとき、男がゆっくりと顔を上げた。
目が合う。
「……こんばんは。」
流暢な日本語で短く挨拶した彼は、少しだけ口元を緩めた。