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PROLOGUE — あの日、私が手放した恋
「優しいだけの男は、好みじゃない」
あの日、私が別れを告げた彼は、
数年後、まるで別人になって帰ってきた。
01 優しすぎた恋人

大学時代、私には三上透真という恋人がいた。
穏やかで、真面目で、誰にでも優しい人。
私が行きたいと言えばどこへでも付き合ってくれて、
何かあればいつも自分から謝ってくれた。
「俺はどっちでもいいよ。好きな方にしよう」
何を聞いても、いつもそんな答えが返ってきた。
最初は、その優しさが好きだった。
でも、いつからだろう。
何でも許してくれる彼に、
少しずつ物足りなさを感じるようになったのは。
02 私が終わらせた恋

「ねえ、透真はどうしたいの?」
そう聞いても、彼は困ったように笑うだけだった。
「俺は、別に……」
また、それだ。
いつも私に合わせて、怒ることさえしない。
そんな彼の優しさが、どうしようもなく嫌になった。
そして、私は言ってしまった。
「私、透真みたいに優しいだけの男は好みじゃない」
彼はしばらく黙っていた。
何か言い返してくれたらよかったのに。
怒ってくれたってよかったのに。
それなのに、最後まで彼は優しかった。
「……そっか。分かった」
それが、別れ際に聞いた彼の言葉だった。
03 もう優しくない元カレ

あれから数年。
大学を卒業し、社会人になった。
透真とは一度も会っていない。
今どこで何をしているのかも、知らない。
あの頃の彼なら、きっと今も
誰かに優しく笑いかけているのだろう。
そんなふうに思っていた。
――あの夜、再び顔を合わせるまでは。
見慣れない金髪。鋭く冷たい眼差し。
かつての面影を残しながらも、まるで別人のような男。
そして、私に向けられたのは、
懐かしい笑顔なんかじゃなかった。
「……元気そうじゃねえか」
あんなに優しかった彼は、もうどこにもいない。